メンタルがつらいとき。10分だけ「歩く瞑想」をしてみよう!
歩く瞑想(歩行瞑想)とは?歩く瞑想のやり方や、実際やってみて気づいたことをシェアします。試験・面接などの前で緊張しているときや、精神的につらい、心が不安や怒りでいっぱいのときに、特にオススメです。
はじめに
今日は、「歩く瞑想(歩行瞑想)」のご紹介です。
その名の通り、歩きながら行う瞑想です。
瞑想というと、ふつうは、座って目を閉じて、じっとしてるところをイメージします。
でも、座って目を閉じるだけが瞑想ではありません。
手を動かす瞑想、食べる瞑想、などなど、カラダの動作にともなって行う瞑想はいろいろあります。
今日は、歩く瞑想のご紹介です。
歩く瞑想のやり方
「マインドフルネス・ストレス低減法」の中で紹介されている、歩く瞑想のやり方をご紹介します。
歩く瞑想の基本
歩行瞑想法は、 歩くという体験に意識的に注意を向けるトレーニングです。足の感覚、あるいは体全体の動きに注意を集中します。
歩行瞑想法は、まず地面につけた方の足に十分に注意を集中することから始まります。地面についた足に徐々に体重がかかり、それにつれてもう一方の足が上がり、前方に動き、また地面に降ります。この動きが繰り返されるわけです。
歩行瞑想法でも、心が足から離れたり、歩いているという感覚から離れてさまよいだしたことに気がついたら、速やかに意識を歩くことに戻してください。
歩いているときは、周りの景色を眺めたりせずに、視線を前方に固定してください。これは、集中力を高めるためです。また、足先を見て歩くのもいけません。見ていなくても、足は勝手に歩いてくれます。
歩行瞑想法は、外部の観察ではなく、歩くという、自分の内部に生じてくる感じを観察する力を養うためのトレーニングなのです。
引用元:「マインドフルネスストレス低減法」J・カバットジン著、北大路書房、2007年。以下同じ。
歩くという行為は、健常者であれば、当たり前の行為です。
特に意識しなくてもできます。
でも、よく考えてみると、小さな足の裏で、カラダの全体重を支え、前後左右のバランスを保ちながら前に進むというのは、すごいことです。
しかも、スピードを自在に変えたり、方向を変えたり、坂道やでこぼこ道にも柔軟に対応するのですからね。
当たり前の動作に、注意を集中してみると、それが当たり前ではないことに気がつきます。
歩く速さは?
歩く速度は、どんな速さでもかまいません。
ストレス・クリニックでは、一歩に1分かかるぐらいの非常に遅い速度で歩く場合もあります。ゆっくり歩くと、瞬間、瞬間における一つ一つの動きに注意を集中することができるのです。
もちろん、普通の速度で歩く場合もあります。また、非常に早い速度で行うこともあります。これは、速く歩いても、意識をつなぎとめておくための練習です。
私が歩く瞑想をするときは、普通より少しゆっくりめに歩いています。
右足が地面につく感覚→左足が地面から離れる感覚。。。
というふうに一つ一つ注意を集中していると、なかなか速くは歩けないです。
でも速く歩いてはいけないということではありません。
速く歩くと、足の裏の感覚などをていねいに感じるのは人によって難しいかもしれませんが、カラダ全体の動きに注意を集中することならできると思います。
ポイントは、足やカラダの感覚にしっかり注意を集中することなので、歩くスピードに決まりはありません。
かける時間は?
正式なトレーニングとして歩行瞑想を始める場合は、ゆっくりと行ったり来たりできる場所と、10分程度の時間を確保してください。
私も、かける時間は10分くらいにしています。
早朝や寝る前に、さっと外に出て、家の周りを10分くらい散歩する感じでやります。
こんなときにオススメ!
私の瞑想歴は、半年ほど。
主に、目をつぶって呼吸に集中するタイプの瞑想を、毎日実践しています。
そんな私が考える、「歩く瞑想」をオススメするシチュエーション、考えてみました。
瞑想の専門家ではなく、あくまで瞑想を実践している一個人の感覚ではありますが、参考になれば嬉しいです。
心が緊張しているとき
心が緊張しているとき、歩く瞑想はオススメです。
例えば、大切な試験や面接の前。
また重要な会議、プレゼンや、大舞台の前。
あるいは彼女にプロポーズする前など。
緊張して、ドキドキしているときは、何をしても落ち着きません。
ノドが異常に乾いたり、吐き気をもよおすこともあります。
そんなときに、ちょっと家の外に出て、10分でも歩く瞑想をしてみると、いくぶん気持ちが落ち着きます。
少なくとも注意を足の感覚に集中している間は、試験のこととか、プレゼンのこととか、考えなくてもすみますからね。
精神的につらいとき
精神的につらいときも、オススメです。
失恋した。受験に失敗した。仕事で大きな失敗をした。職場や家庭の人間関係で、大きな悩みを抱えている。
不安や怒りがおさまらなくて、何をしても落ち着かない。
つらくて、夜中に泣きそうになる。
私も、つらくて心が折れそうになることがあります。
個人的なことになりますが、私は国家公務員をやめ、地方に移住して新たなスタートをきりました。
本当に我が家の家計は大丈夫なのか。。早々に貯金がつきたりはしないか。。
そんなふうに、心が不安でいっぱいになるときが、たまにあるのです。
心が非常に不安定なときって、普通の呼吸瞑想(静座瞑想)をするのはなかなか大変なのですね。
そんなときは、静座瞑想は早めに切り上げ、さっと家の外に出て、歩く瞑想をします。
少し気持ちが落ち着きますね。
こんな興味深い話もあるので、以下引用します。
「ストレス対処プログラム」を始めたある若い女性は、イライラがひどい精神状態で、一瞬たりともじっとしていることができませんでした。
私たちが説明している間も、彼女は、 体をピクピク動かしたり、歩き回ったり、壁をたたいたり、机の上の電話コードをひっきりなしにいじったりと、ひどく落ちつきませんでした。
ボディー・スキャンや、静座瞑想するなどということは論外でした。 ほんの短い時間でさえ続けることができないのです。動きのあるヨーガにしても、彼女にとってはじっとしているに等しいものだったのです。
しかし彼女は、異常な不安を抱えていたにもかかわらず、「狂気から脱出する道は、瞑想しかない」と直感的にわかっていたようです。
そして、歩行瞑想が、 彼女の頼みの綱でした。自分では全くコントロールできない悪魔の時が訪れると、心をつなぎとめ、集中力を保つために、歩行瞑想を使ったのです。
月日がたつうちに、彼女の状態はしだいに改善され、やがて他の瞑想にも挑戦できるようになりました。
しかし、 自分ではどうにもできないような状態になったときに、何とかしてくれるのは歩行瞑想だったのです。
状況は人それぞれで、一概にはいえませんが、
座って瞑想することができないくらい精神状態が悪い人にとって、歩く瞑想が「頼みの綱」になることがあるのですね。
赤ちゃんの夜泣き
歩行瞑想をオススメしたいシチュエーション、こちらは番外編です。
赤ちゃんの夜泣きのときです!
個人差もありますが、赤ちゃんは生後数か月すると、夜中に理由もなく激しく泣くようになります。
母乳でもオムツ替えでもなく、理由もないのに、近所に響きわたるような大きな声で泣くのです。
私の妻なんかは、夜中の1時、2時まで、泣き止まない子を抱いて、夜の住宅街を徘徊していたこともありましたww
抱っこしている間、
ああ早く泣き止まないかなあ。。
明日仕事で朝早いから、早く寝たいなあ。。
みたいな思いにとらわれがちです。
でも一向に泣き止まないから、余計にイライラ。。
そんなとき、いろいろな思いは忘れて、歩行瞑想してみるのもありかもしれません。
どうやっても泣き止まないですし、家にいてはおさまりません。
どっちみち、泣く子を抱いて、夜中街を徘徊しなくてはならないのです。
ただ一歩一歩、足の感覚に注意をすましてみる。気持ちが少し楽になるかもしれません。
注意すべき点は?
歩く瞑想を行う際の注意点を、2点ほどあげておきます。
目的地を設定しない
歩行瞑想を行うときは、目的地を設定しないようにしてください。
自分が今いる場所を認識し、一歩一歩に注意を集中するようにして歩きます。歩行瞑想を行うときの秘訣は、”その場に存在している”ということを完全に意識する、ということです。
そのためには、部屋の中をぐるぐる歩き回ったり、細い道をいったりきたりするのがいいでしょう。
こうすると、目的地もなく、興味を引くようなことも起きないので、他のことに気を取られずに歩くことができます。
私は、歩く瞑想をするときは、家のまわりにある、田んぼの脇の細い道を行ったり来たりします。
目的地があって歩く場合、例えば買い物にスーパーに行く道の途中だと、「着いたら何を買おうかな」「あ、ポイントカード忘れた」みたいに、余計な考えが頭に浮かぶ可能性があります。
ですから、目的もなく、ただ歩くことに集中できる環境をつくった方がいいですね。
周囲の状況に注意
当然、周囲の状況には注意が必要です。
車や人が往来しているところだと、危ないですし、周りの状況が気になってしまいます。
また、人目が気になって、集中できなくなることもあるので、人目がないところの方がいいと思います。
静かな住宅街の小道や、だだっ広い公園がオススメです。
部屋の中でもできますね。
おわりに
本エントリは、「マインドフルネスストレス低減法」で実践されている歩行瞑想をご紹介したものです。
「マインドフルネスストレス低減法」は、マサチューセッツ大学のジョンカバットジン博士が開発した8週間のプログラムで、現在は認知療法への応用も進んでいます。
ただ、歩く瞑想は、マインドフルネスのもとになった伝統的な仏教の文脈においても、昔から行われてきたものです。
例えば、禅の世界では、経行(きんひん)といって歩く禅の作法があるそうですね。
また、関連して、カラダを動かすタイプの瞑想には、他にも「手動瞑想」「食べる瞑想」などがあります。
こちらのエントリも、あわせてご参照いただけたら嬉しいです。
パオ