【指導者編】ヴィパッサナー瞑想センター(京都)10日間コース参加レポート
ヴィパッサナー瞑想センター(京都、千葉)で行われる10日間の瞑想合宿に行ってきました。シリーズでお届けする参加レポート第9弾は、【指導者編】。コース中の指導者の役割や、信頼関係の築き方についてまとめました。
はじめに
京都センター敷地内の様子(筆者撮影、以下同じ)
昨今、メンタルに良い効果があると話題の、マインドフルネス瞑想。
これ、もともとは、仏教徒たちが伝統的に行ってきた「ヴィパッサナー瞑想」に由来しています。
今、日本で本格的な「ヴィパッサナー瞑想」を泊まり込みで体験できる場所があります。
その名も「ヴィパッサナー瞑想センター」。
施設は、京都と千葉の2か所。どちらも、人里離れた山奥の静かな場所にあります。
1日の瞑想時間はなんと10時間。そしてこれを10日間。合計100時間行います。
2019年5月8日から19日まで、私は京都で10日間コースに参加してきました。
一つのエントリではとても語りつくせないので、参加レポートをシリーズでお届けしたいと思います。
今回は、【指導者編】。
10日間コースでは、アシスタント・ティーチャー(AT)と呼ばれる指導者が必ず1人ついてくれます。
この指導者の役割や、信頼関係の築き方、思うところなどをまとめてみました。
指導者の役割
このセンターでは、世界的に有名なミャンマー出身の瞑想指導者S.N.ゴエンカ氏が確立した瞑想法が指導されています。
瞑想法の具体的な指導は、全てゴエンカ氏の録音テープを聞くかたちで行われます。
毎晩1時間30分程度行われる講話も、ゴエンカ氏のテープによるものです。
ですから、参加者は、瞑想法の知識や技術の大部分をテープから学ぶかたちになります。
ただ、指導者は何もしていないわけではなく、瞑想ホール中央の指導者席にすわりながら、ともに瞑想し、全体の統括をします。
加えて、自主瞑想の時間には、各参加者に対して個別指導をしたり、質問への対応などもします。
全ての参加者は、指導者の指示に完全に従うことが求められます。
指導者の指示のいかなる点も無視することなく、また付け加えることなく、ただ教えられる通りに瞑想する必要があります。
コース中、守るべきルールはたくさんあり、わりと厳しめです(詳しくは、生活編を参照のこと)。
ここでは、参加者は「お客さん」ではなく、あくまで「生徒」です。指導者と生徒の上下関係は明白でした。
ただ一方で、盲目的服従があってはならないことも強調されていました。
教えられた瞑想法を自分から理解し、納得した上で進まなければ意味がないので、疑問が生じたらそれをすぐに解消できるよう、質問の時間は重視されていました。
自主瞑想中の個別指導
自主瞑想の時間に、何度か、指導者が直接参加者に対し、個別指導をする時間があります。
10日間コースの間で、5〜6回くらいありました。
1回に5人くらいが名前を呼ばれ、指導者席の前に集まります。
そのとき指導されている瞑想法について簡単に確認し、指導者の前でしばらくの間瞑想します。
ただ、個別指導といっても、手取り足取り教えてくれるわけでもなく、質問にていねいに答えてくれるわけでもなく、少し形式的な感じがありました。
参加者は男女あわせて50人もいるので、一人ひとりに充てられる時間は非常に短いです。
ただ、指導者の目の前で瞑想するというのは、なかなか気持ちがシャキッとして、良いものでした。
1日10時間も瞑想していると、どうしても途中で気持ちが緩んできます。そんな中で、5分でも個別指導があると、気合が入り、良いアクセントになりました。
個人面談の時間
ご参考までに、1日のスケジュールは以下の通りです。
4:00 |
起床 |
4:30 |
瞑想 |
6:30 |
朝食、休憩 |
8:00 |
グループ瞑想 |
9:00 |
瞑想 |
11:00 |
昼食、休憩 |
12:00 |
指導者との面談 |
13:00 |
瞑想 |
14:30 |
グループ瞑想 |
15:30 |
瞑想 |
17:00 |
ティータイム、休憩 |
18:00 |
グループ瞑想 |
19:00 |
講話 |
20:15 |
グループ瞑想 |
21:00 |
ホールにて質問 |
21:30 |
消灯 |
個人面談の時間は、1日に2回設けられていました。
昼食後の時間(12:00)と、夜のグループ瞑想の後の時間(21:00)です。
お昼の面談は、1対1の個人面談形式。事前に申し込みが必要です。
夜の質問は、一応、1対1形式ですが、他の参加者も同席する中での質問となります。
そして、注意事項があります。
質問は簡潔に。瞑想の技術的な問題についてのみ質問すること。
パーソナルな問題や、哲学的な論争などは持ち出してはいけません。
指導者と直接コミュニケーションを取れる時間は、この個人面談以外には基本ないので、私は積極的にこの時間を利用しました。
今回の指導者には失望。。
ゴエンカ氏のテープによる瞑想指導は、わかりやすくまとまっていて、頭の中ではよく理解できました。
でも実際に瞑想してみると、説明の通りにいかないこともしばしば。1日に瞑想時間は10時間もありますから、疑問はどんどん湧いてきます。
私は、理屈で納得しないとなかなか先に進めないので、毎日のようにお昼の個別面談を申し込みました。
指導者と私のやり取りを、ざっくり要約すると、例えば以下のようになります。
私:
ゴエンカ氏のテープでは、カラダを細かい部分に分けて感覚を観察していくとの指導がありましたが、これをやろうとすると、感覚を拾い取れず、雑念が入ってしまって苦しいです。ためしに、観察の対象を少し広げてみると、うまくできました。
テープで指導された手順を厳密には守れない場合、細かい部分を自分なりにアレンジすることは、問題ありませんか?
指導者:
質問は短く!全てテープの通りやってください。
私:
あ。。すみません。。
私は、合計で5回くらいは質問をしに行きましたが、毎回こんな調子でした。
今回の指導者が外国の方で、日本語がそれほど流暢ではないということもあり、うまくコミュニケーションを取ることができませんでした。
しまいには話を遮られる始末。
はじめのうちは毎日質問に行っていましたが、質問してもなかなか疑問が解消されず、コース中盤ぐらいであきらめました。
今回の指導者に関しては、他の参加者も多かれ少なかれ不満を抱いていたようで、私としても信頼関係を築くことができず、残念でした。
ただ、私はたまたま運が悪かっただけだと思います。
ヴィパッサナー瞑想センターでは、京都にも千葉にも、多くの指導者がいるはずですし、優れた指導を行なっている方もいるだろうと推測します。
信頼関係を築くには?
瞑想修行を成功させるには、指導者との信頼関係が不可欠です。
瞑想というのは、非常に感覚的な体験です。
指導者にとっても、生徒にとっても、その体験の機微をことばで伝えるのは、簡単なことではありません。
また瞑想というのは、非常にパーソナルな体験でもあります。
瞑想中に、自分の過去のトラウマなどが呼びおこされたりして、苦しい思いをしたりします。
ですが、指導者は、瞑想の指導者なのであって、パーソナルな悩みを相談できる相手ではありません。
パーソナルな問題に直面しても、それをどうにか瞑想の技術的な問題に落とし込んで、指導者に簡潔に伝えなければいけません。
指導者の方も、瞑想の技術的な問題について回答しつつも、それが生徒のパーソナルな問題の解決に資するよう、配慮が必要です。
お互いに、これができていないと、信頼関係を築くのは難しいかもしれません。
とにかく指導者に対しては、簡潔な質問をぶつけること。
パーソナルな問題を、できるだけ瞑想の技術的な問題に落とし込むこと。
さらには、哲学や形而上学、仏教教理に関する論争をふっかけたりはしないことです。
あとは、何度も個人面談に通い、関係を築いていくしかありません。
おわりに
指導者も、ボランティアです。
ヴィパッサナー瞑想センターで、長い間瞑想修行や奉仕の経験を積み、協会から任命されて指導にあたっている方々です。
普段は別の仕事をしている方も多いと思います。
10日間コースにいくら慣れているとはいっても、1度に50人の生徒を相手に指導をするわけですから、相当にタフな仕事です。
一人一人のケアが行き渡らなくても、仕方ないかもしれません。
それでも、多くの参加者は、自分の瞑想上の疑問を晴らそうと、指導者に必死に食らいついている感じでした。
私も、今回の指導者とは結果的にうまくコミュニケーションが取れず残念でしたが、それでも、積極的に質問してよかったと思っています。
瞑想の体験を、ことばで表現して伝える。そして受け取ったことばをまた解釈して、次の実践に生かす。
その試行錯誤も、修行の一環なのだと思いました。
参考になれば嬉しいです。
パオ