データから読み解く、日本人の宗教観とは?
あなたは何らかの宗教を信じますか?「あの世」ってあると思いますか?文化庁がまとめたある調査結果から、日本人の宗教観がどのようなものであるのかについて、考えてみました。
はじめに
普段はあまり意識しないけれど、人生で避けては通れないのが、「宗教」の話。
みなさんは、宗教や信仰について、どんな考え方をお持ちでしょうか?
日本人がどんな宗教観を持っているのかがわかる、興味深い調査がありました。
文化庁が公表している「宗教関連統計に関する資料集」(平成27年)です。
あなたは宗教を信じますか?
興味深いデータ
— パオ@メンタルハック・ブロガー/公開2か月で約1万PV (@PaoElephant) March 10, 2019
【日本人の「宗教を信じるか」に関する意識の推移】
「宗教を信じている」と回答した割合は、昭和30年代から現在にかけてずっと3割前後で、大きくは変化していない。
「最近の若者は宗教から遠ざかっている」というイメージはおそらく間違いで、戦後は特に大きな変化なし🤔 pic.twitter.com/zFafcpRzEN
統計数理研究所が行なった調査です。
「あなたは、何か信仰とか信心を持っていますか?」という質問に対し、「持っている、信じている」、あるいは「持っていない、信じていない、関心がない」で回答するもの。
この調査を昭和30年代から、現在まで行なっており、その推移を見るものです。
「宗教を信じている」人の割合は、昔からたいして変化していません。
「昔の人は信心深かった」なんてイメージを抱きがちですが、 それは事実ではなさそうです。
続いて、同じ調査を、男女別・世代別で見たものがこれです。
「宗教を信じるか」に関する意識(男女・世代別、H25年)
— パオ@メンタルハック・ブロガー/公開2か月で約1万PV (@PaoElephant) March 10, 2019
✅「宗教を信じる」と回答した割合は3割弱
✅男女では大差なし
✅年齢が上がるにつれ、「宗教を信じる」割合は増える。20代では13%だが、70代以上になると44%にのぼる pic.twitter.com/AiSKO5qgnk
男女別では、大きな差はありません。
年齢が上がるにつれ、「信じている」割合が高くなっています。
年齢が上がるにつれ、家族や友人との死別や病気などに接し、宗教的な心をもつきっかけが増えるのかもしれません。
宗教心は大切だと思いますか?
続いて、「宗教的な心というものは、大切だと思いますか?」という質問。
「宗教心は大切か」に関する意識調査(男女・年代別、H25年)
— パオ@メンタルハック・ブロガー/公開2か月で約1万PV (@PaoElephant) March 10, 2019
✅全体の66%が「大切」と回答
✅男女間で大差なし
✅年齢が上がるごとに、「大切」と回答した割合は増える傾向。20代は55%、70代以上は77%。 pic.twitter.com/Tyy6o3oDiN
この質問では、先の質問とはうってかわって、「大切だ」と回答した人の割合が66%を占めています。
「宗教を信じる」と答えたのは3割程度なのに、対し、「宗教心は大切」と答えたのは6割。
これは、どのように考えればいいのでしょうか?
「宗教を信じる」というのは、個人的な信仰を持っているということですね。
神様、仏様、その他信仰の対象というものを持っていて、程度の差はあれ、日常的にそれを意識して暮らしているということです。
それに対して、「宗教的な心を持っている」というのは、もう少し社会的なものであるという気がします。
「宗教的な心」の定義が明示されていないので、人によって解釈に幅は出てきてしまいますが、
先祖をしっかり敬おう、知人のお葬式にはちゃんと出席しよう、法事には参加しよう
といった規範に近いイメージなのだと思います。
日本人の場合は、個人的には明確な信仰は持っていないけれども、社会のルールとして、宗教心は持っているというタイプの人が、多数派なのだろうと思います。
「あの世」を信じますか?
これもまた面白い調査(日本人の国民性調査、H25年)
「あなたは「あの世」というものを信じますか?」という質問に対する回答
✅「信じる」と回答した割合は4割
✅男性3割、女性5割と、男女間で顕著な差
✅世代間で大きな差は見られないが、60代以上は3割台と少ない傾向 pic.twitter.com/p15sTB1VXa— パオ@メンタルハック・ブロガー/公開2か月で約1万PV (@PaoElephant) March 10, 2019
「あの世を信じますか?」という質問に対する回答結果です。
「信じる」と回答したのは、男性で3割、女性で5割と、男女間で大きく開きがあります。
今までの質問では、どれも男女間で大きな差はなかったので、印象的ですね。
世代別に見ると、20代〜50代では、5割弱で大差ありませんが、60代以上になると、3割台に低下しています。
信仰や宗教心は、年齢が上がるごとに強くなる傾向にありましたが、「あの世」となると、低くなるのも不思議です。
人を救えるのは科学ですか、宗教ですか?
「宗教か科学か」に関する意識調査
— パオ@メンタルハック・ブロガー/公開2か月で約1万PV (@PaoElephant) March 10, 2019
(日本人の国民性調査、H25)
・宗教否定「人を救えるのは科学」:12%
・宗教科学協力「人を救うには宗教と科学両方必要」:45%
・宗教のみ「人を救えるのは宗教」:3%
・両方否定「宗教でも科学でも人は救えない」:32%
両方否定する人が意外に多い🗒 pic.twitter.com/QdKVD4uw3y
これも面白い質問ですね。
人を救えるのは科学か、宗教か?という質問。
正確には、質問の記述は以下の通り。
①宗教否定:宗教というものは,人間を救うことはできない。人間を救うことのできるのは科学の進歩以外にはない
②宗教科学協力:人間の救いには科学の進歩と宗教の力とが、たすけあってゆくことが必要である
③宗教のみ:科学の進歩と人間の救いとは関係がない。人間を救うことができるのはただ宗教の力だけである
④両方否定:科学が進歩しても,宗教の力でも,人間は救われるものではない
みなさんは、どの考え方が、自分の感覚と一番近いでしょうか?
割合として一番多かったのは、②の宗教科学協力ですね。
身近な人や自分自身に、大きな病気や死というものが迫ってきた場合に、多くの人は医療を頼ったりしますが、それでも難しいとき、神様、仏様も頼りますよね。
両方必要だという感覚は、私は共感できます。
意外に多いなと思ったのは、④両方否定です。32%もいるのはちょっと驚きでした。
③「宗教のみ」とした割合は、3%と少ないですね。
おわりに
こうしてみると、日本人の宗教観、信仰心の強さや、神仏との距離というのは、質問の仕方によって大きく異なっていることがわかります。
それだけ、日本人の宗教についての考え方は、曖昧なところがあるのでしょう。
今回のエントリ、文化庁の宗教関連統計に関する資料集(平成27年)からご紹介してみました。
引用したデータは、統計数理研究所の「日本人の国民性調査」が元になっています。
興味のある方は、ぜひ見てみてください。
パオ