名著「呼吸による癒し」の重要ポイント
「呼吸による癒し」(ラリー・ローゼンバーグ著、春秋社、2001年)で語られている重要なポイントをご紹介します。
「呼吸による癒し」
「呼吸による癒し」は、2001年発行と古いですが、マインドフルネスや瞑想の分野では、名著として現在でも読み継がれている本です。
著者のラリー・ローゼンバーグ氏は、社会心理学の博士で、ハーバード大学やシカゴ大学で教鞭をとっていた一方、坐禅や瞑想の修行歴は30年にのぼるという方です。
この本は、ヴィパッサナー瞑想という仏教の瞑想法について、自身の体験からやさしく語りかけるような内容となっています。
文章はやさしいですが、内容がちょっと抽象的なので、なかなかとっつきにくい本ではあります。
ですが、とても重要だと思ったポイントがあったので、ご紹介します。
瞑想・坐禅ってハードル高い
瞑想とか、坐禅の修行って、ちょっとハードル高いですよね。
最近でこそ、カジュアルにちょっと瞑想・坐禅をかじってみる人も
増えている気がしますが、一昔前までは、非常にとっつきにくいものでした。
ストイックに山にこもって悟りを目指す!的なイメージですね。
仕事もすて、出家でもしない限りは、瞑想・坐禅修行の先にある景色を見ることは難しかったわけです。
また、日本では1995年の地下鉄サリン事件があってから、カルト宗教に対して警戒心を抱く人が増えました。
それにともなって、瞑想や坐禅といった実践に対しても、怪しいというイメージが、つきまとうようになりました。
そういった経緯もあって、瞑想・坐禅というものは、最近まで、なかなか一般には普及しませんでした。
修行を日常生活に生かすという視点
この本の重要なポイントは、瞑想や坐禅の修行のエッセンスを、日常生活に持ち込むことを推奨しているところです。
著者は指摘します。
一日のうち、いくらクッションの上で坐禅修行をする時間を増やしても、それ以外の時間は、何か他のことをしている。
だから、修行を日常生活に生かすことができなければ本末転倒であると。
日常生活に、修行を持ち込むためのコツとして、以下の5つをあげています。
1.できれば、一度にひとつのことしかしないこと
禅の有名なアドバイスに、「坐るときにはただ座れ。歩くときにはただ歩け。ヨロヨロするな」というのがあります。
いつも「この状況の中で私にとって中心となる行為は何か?」と自問自答してみると良いでしょう。
もしあなたが皿洗いをしているなら、ただ洗いなさい。運転しているなら、ただ運転するのです。
2.自分がしていることに十分な注意を払うこと
そのときしている仕事と自分との間に何物も介入していないとき、私たちは充分な注意を払っているといえます。
汚れた皿が山のように積まれた流し台に向かって、その夜観に行く予定の映画について考えながら、その仕事にうんざりしていたり、時間がなくなるとイライラしているなら、あなたは自分のしていることから切り離されています。
手を洗っていますが、心は洗っていません。
このように分離してしまうと、とても充分に生きているとはいえません。
3.していることから心がふらふら離れていったら、心を連れ戻すこと
心があまりにさまよって仕事がまったくはかどらないときがあります。
行動と分離してしまったときは、無理に行動とひとつになろうとせず、分離してしまったことをただ見つめなさい。
その見ることによって行為の全体性が回復されます。
思考は注意の炎によって焼き尽くされ、あなたはしていることをただしているだけになります。
4.「心を連れ戻す」を何万回、何億回と繰り返すこと
心がさまよっていたら、その状態から優しく、非難することなく、戻ってくることが大切です。
5.気が散ってしまうプロセスを調べること
心が繰り返し何か他のことを考えてしまうときは、心に去来するものを見てみることが役立つかもしれません。
それは人生の中であなたがしなければならない何か、あるいはやめなければならない何かを告げようとしているのかもしれません。
人生というのは私たちがちゃんと対応していないときには、ある種の仕方で意識の中に割り込んでくるものなのです。
状況が許すなら、あなたの気を散らすものに意識の焦点を当てるようにしてください。
しばらくそれに時間をかけてから、元の仕事に戻ります。
むすび
この本は、瞑想修行に本格的に取り組みたい、なんなら出家もしたい!という人向けに書かれているので、一般の人にはちょっととっつきにくい内容にはなっています。
翻訳文ですし、ちょっと言い回しがわかりにくいところもありますね。
でも、上にあげた日常生活に修行を持ち込む方法というのは、瞑想をちょっとかじってみたいくらいの人にとっても、参考になる部分があります。
著者は、どんなにすごい修行者であっても、日常生活がおろそかになってはいけないということを、強く意識しているように思います。
瞑想やマインドフルネスを、日常生活に生かす。
考えてみれば当たり前です。
今でこそ、本屋さんにいけば、瞑想やマインドフルネスのわかりやすい入門書が写真やCD、DVD付きで、たくさん売られています。
マインドフルネスを、日常生活に生かそう!
オフィスでも、カフェでも、電車の中でも、マインドフルネスをやってみよう!
こういう視点は、今では珍しくなくなりました。
でも、この本が書かれた2001年時点では、なかなか新鮮だったように思います。
マインドフルネスの普及に大きく貢献した名著です。
PAO