瞑想Hack

瞑想を始めたい・続けたい人のための瞑想ライフハック・ブログです。瞑想に取り組む上で知っておきたいことを、脳科学や仏教の視点も交え、わかりやすく解説しています。

MBSRプログラム参加レポート③静座瞑想

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f:id:pao-elephant:20200108121036j:plainマインドフルネスストレス低減法(MBSR)8週間プログラムの参加レポート。第3弾は、「静座瞑想」編です。瞑想の基本中の基本、「静座瞑想」のやり方から、取り組む上での心構えや感想などをシェアします。

 

 

 

 

 

はじめに

f:id:pao-elephant:20200108120250j:plainMBSRプログラムが行われる関西医大病院の外観(筆者撮影)

 

 

瞑想というと、一昔前までは「怪しい」イメージがついて回っていました。

 

 

しかし、瞑想にはメンタルに良い効果があることが科学的にも明らかになり、最近ではずいぶんカジュアルなものになりました。

 

 

瞑想がストレス低減に効果があるという研究は数多く報告されていますが、その多くは、「
マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」と呼ばれるプログラムに関するものが多いです。

 

 

マインドフルネスストレス低減法(MBSR:Mindfulness-Based Stress Reduction)とは、マサチューセッツ大学のジョン・カバットジン博士が開発した、瞑想やヨガを中心とする8週間のプログラムのこと。

 

 

もともとは、慢性的な痛みを抱える患者のために開発されたものですが、しだいに、ストレス反応、抑うつ症状、怒り、ADHDの症状などさまざまなメンタル問題にも効果があることがわかり、今では世界のいくつかの大学や医療機関で実施されるまでになりました。

 

 


 

当ブログでは、実際にこのMBSRのプログラム(MBSR研究会)に参加した私が、そこで学んだことや感じたことをレポートしていきます。

 

 

このエントリでは、第3弾として、「静座瞑想」を取り上げます。

 

 

静座瞑想を行う際の心構え、やり方などを解説するとともに、個人的な感想をシェアしていきます。

 

 

 

静座瞑想とは?

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「静座瞑想」とは、読んで字のごとく、「静かに座って」行う瞑想です。

 

 

ボディスキャンのように「注意を集中する対象を次々と変えていく」ようなこともなければ、ヨーガ瞑想のようにカラダを動かすわけでもない、最もシンプルな瞑想といえます。

 

 

まさに、瞑想の基本中の基本です。

 

 

現在に生きる私たちは、常に何かに追われています。

 

 

スケジュールに追われ、仕事上の責任に追われ、家庭で果たさなければならない役割に追われています。

 

 

次から次へと、「何かをする」ことに駆り立てられています。

 

 

瞑想とは、まさに "何もしない" ということです。

 

瞑想は、私が知っている限りでは、目標や目的に向かうのではなく、自分が今いる場所に "存在することに価値を見いだす" ための唯一の方法です。

 

そこで、毎日、正式な瞑想トレーニングのための時間をとって、ふだんの生活を一時中断して、本来の自分自身を思い出し、自分の存在を実感する必要が生じてくるのです。

引用元:p.93『マインドフルネスストレス低減法』J.カバットジン著、北大路書房、2007年

 

 

 

MBSRにおける静座瞑想の位置付け

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MBSRのプログラムにおいて、静座瞑想は、ボディスキャン、ヨーガ瞑想と並んで、最も重要視されるエクササイズのひとつです。

 

 

これら3つのエクササイズは、いわば3本柱のようになっており、どれも欠かすことのできない存在です。

 

 

MBSRのプログラムは全部で8週間からなっていますが、週1回2時間半程度のクラス参加と、毎日1〜2時間の自宅実践が求められています。

 

 

静座瞑想は、プログラムの中盤、第5週目あたりから本格的に始まります。

 

 

第8週目が終わるまで、静座瞑想は、全体のエクササイズの中でも中核的な位置を占めています。

 

 

プログラムも中盤をすぎると、参加者たちは、ボディスキャン、ヨーガ瞑想、その他さまざまなエクササイズに慣れてきているので、本格的な静座瞑想が始まったときも、それほど難しさを感じることはないと思います。

 

 

なにせ、最も難易度の高いと言われるボディスキャンを、第1週目からがっつりと耐えてきた参加者たちですから、スムーズに静座瞑想に取り組めるはずです。

 

 

本格的な静座瞑想は、1回50分程度ですが、5〜10分程度の短い瞑想は、プログラム各所に散りばめられています。

 

 

私個人としては、このプログラムを受講する前から瞑想経験があり、静座瞑想のエクササイズをどこか心待ちにしていたところがあったので、まさに「待ってました」という心境で取り組んでいました。

 

 

逆に、もともとヨガを実践していて、このプログラムに出会ったという方は、カラダを全く動かさない静座瞑想というものをとても新鮮に受け止めていたようでした。

 

 

 

静座瞑想の手順

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静座瞑想の手順を簡単に解説していきます。

 

 

姿勢

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最も重要なのは、姿勢です。

 

 

静座瞑想のときは、頭と首と背筋を一直線にして、垂直に座ってください。

 

これは呼吸を楽にするだけではなく、自分の内部の自信や受容力、注意力を高めることにもなります。

引用元:p.94『マインドフルネスストレス低減法』J.カバットジン著、北大路書房、2007年

 

 

座るのは、イスの上でも、床や畳の上でもかまいません。

 

 

床や畳の上に座る場合は、クッションや座布に浅く腰かけるようにし、自然にピンと背筋が伸びるようにします。

 

 

 

注意を向ける対象

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瞑想は「心を無にすること」なんて言われたりしますが、なかなか難しいと思います。

 

 

「心を無にすること」のではなく、何か特定のものに注意を集中すると、瞑想のコツがつかめると思います。

 

 

注意を向ける対象はいくつかありますが、プログラム中に指導されたのは、

 

 

・呼吸
・カラダの感覚
・音
・思いや考え

 

 

の4つでした。

 

 

注意の対象が何であれ、ポイントは、

 

 

・対象をただ観察すること
・注意がそれたら、それたことに気づき、注意を元に戻すこと

 

 

の2つだけです。

 

 

初心者でも取り組みやすいのは、やはり「呼吸」です。

 

 

自然な呼吸、鼻の穴を出たり入ったりする空気の流れを、ていねいに観察するように、注意を向けていきます。

 

 

しばらくすると、いつの間にか注意がそれ、雑念が生まれていることに気がつくと思います。

 

 

頭の中に、次から次へと雑念や妄想が生じては消えていきます。

 

 

注意が呼吸からそれていることに気付いたら、そっと注意を呼吸に戻します。あとは、それをひたすら繰り返します。

 

 

慣れてきたら、注意の対象を、カラダの感覚(全身の皮フ、筋肉、内臓などの感覚)、(耳から入ってくるさまざまな音)、思いや考え(今自分はどのような思い・考えを抱いているか)へと移していきます。

 

 

 

静座瞑想を行う際の心構え

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雑念・妄想は悪いものではない

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瞑想中、雑念や妄想がわいてくるのは、極めて自然なことです。

 

 

「意識を呼吸に集中する」とどれだけかたく決心したところで、次の瞬間には、今日の夕飯のメニューや、明日の仕事のスケジュールについて考えてしまうものです。

 

 

そんなとき、ついつい、「こんなに集中力のない自分は瞑想に向いてないんじゃないか」と悩んだり、無理に雑念を押し殺そうとしたりする人がいます。

 

 

雑念・妄想は、悪いものではありません。

 

 

何かを考えてしまうことが "悪い瞑想" で、何も考えないことが "良い瞑想" である、というふうに考えてはいけません。

 

思い違いをしないように強調しておきますが、瞑想中に何かを考えるのは、悪いことでも望ましくないことでもありません。

 

問題は、考えていることに自分が気づくかどうかということ、そして気がついた時点でどうするかということなのです。

 

そういう思いを押し殺してしまうと、おだやかさや安らぎは遠のいていき、緊張感や欲求不満がつのり、いろいろな問題が生じてしまうのです。

引用元:p.104『マインドフルネスストレス低減法』J.カバットジン著、北大路書房、2007年

 

 

プログラム中も、講師からは、

 

 

「注意がそれていることに気付いたら、それはそれとして受け止め、また注意を呼吸に戻してください」

 

 

と、しつこいくらい指導がありました。

 

 

 

カラダの不快感を受け入れる

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じっと座って瞑想していると、だんだんカラダを動かしたい衝動に駆られます。

 

 

また、足が痺れてきたり、腰が痛くなってきたり、いろいろな不快感に直面します。

 

 

瞑想中は、なるべくこの不快感と向き合い受け入れるように努力する必要があります。

 

 

例えば、瞑想中、腰が痛くなってきたとします。

 

 

普通であれば、姿勢を変えるなどして、無意識に痛みを回避しようとします。

 

 

でも、じっと耐えて痛みと向き合っていると、最初のうちはもちろん辛いのですが、痛みの質が時間とともに変化したり、痛む場所が移っていったり、やがて痛みが消えたり、いろいろな変化があることに気がつきます。

 

 

また、痛みを避けようとする心の自動的な反応も観察することができます。

 

 

慣れてくると、このような痛みや不快感は、集中を妨げるものではなく、むしろ観察の対象となり、注意力を高めてくれるものになります。

 

 

もちろん、極端に不快感が大きい場合は、カラダを動かして対応する必要がありますが、できるだけじっと向き合い、それを受け入れることが必要です。

 

 

 

自分をいたわる

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プログラム中は、講師から何度も、

 

 

「エクササイズが終わったあとは、忙しい日常の中で、心とカラダのケアのために時間をとった自分自身をねぎらってください

 

 

という指導がありました。

 

 

静座瞑想に限らず、ボディスキャンでもヨーガ瞑想でも、終わったあと、

 

 

「気持ち良かった」「よく集中できた」と達成感のあるときもあれば、

 

 

「今日はぜんぜんダメだった」「時間をムダにしてしまった」と落胆するときもあります。

 

 

しかし、どんなときでも、50分なら50分、自分自身のケアのために時間を確保したことに、変わりはありません。

 

 

最後は、あまり厳しくならずに、「よくがんばった」と自分自身をねぎらい、いたわってあげる気持ちがとても大切です。

 

 

 

おわりに

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興味を持たれた方は、ぜひ上記の手順にしたがって試してみてください。

 

 

いきなり1回50分座らなければいけない訳でなく、10分でも、5分でも、無理のない範囲で始めていけば良いと思います。

 

 

MBSRの8週間のプログラムでは、静座瞑想とともに、ボディスキャン、ヨーガ瞑想、その他さまざまなエクササイズがバランスよく組み込まれており、瞑想の効果をより多く実感できるように設計されています。

 

 

本格的に実践したい場合は、やはり正規のプログラムの中で、しっかりとした専門家の指導を受けることをおすすめします。

 

 

MBSRは、もともとカバットジン博士のいるマサチューセッツ大学のメディカルスクールで始まったものですが、現在アメリカではいくつかの大学で学ぶことができます。

 

 

 

 

また近年は日本でも、東京マインドフルネスセンターと大阪のMBSR研究会で、同様のプログラムを受けることができます。

 

 

どちらも医師やMBSR有資格者など、信頼できる指導者(ファシリテーター)から指導を受けることができるので、おすすめです。

 

 

参考になれば嬉しいです。

 

 

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