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瞑想を始めたい・続けたい人のための瞑想ライフハック・ブログです。瞑想に取り組む上で知っておきたいことを、脳科学や仏教の視点も交え、わかりやすく解説しています。

自分に合った瞑想法は?代表的な7種類の瞑想について解説!

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瞑想にはどんな種類があるの?サマタ?ヴィパッサナー?マインドフルネス?よく耳にする代表的な7種類の瞑想法を取り上げ、それぞれの性質や特徴、背景にある考え方について、わかりやすくまとめました。

 

 

 

 

 

はじめに

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瞑想はメンタルに良い効果があることが明らかになり、若い層でも興味をもつ人が増えてきました。

 

 

しかし、一口に「瞑想」と言っても、さまざまな種類があります。

 

 

古代インドからさかのぼれば、2500年かそれ以上の歴史がありますし、その種類はとても数えきれません。

 

 

◯◯瞑想、◯◯瞑想と名前をあげていけばキリがありませんが、このエントリでは、中でも特に代表的な瞑想法を取り上げます。

 

 

以下の7種類です。

 

 

 ①サマタ瞑想
 ②ヴィパッサナー瞑想
 ③マインドフルネス瞑想
 ④歩行瞑想
 ⑤食事瞑想
 ⑥手動瞑想
 ⑦慈悲の瞑想

 

 

瞑想の経験がある方であれば、どれも一度は聞いたことがあるかもしれません。

 

 

ただ、それぞれの瞑想法の内容や性質の違いについては、意外によくわからないままだったりします。

 

 

自分に合った瞑想法を見つけるためにも、それぞれについて一通り理解しておくことがまずは大切になります。

 

 

以下、わかりやすく解説していきます。

 

 

①サマタ瞑想

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伝統的な瞑想法は、大別すると「サマタ系」と「ヴィパッサナー系」の2つに分けられるといいます。

 

 

サマタ瞑想をひとことで言うと、「何かひとつのものに意識を集中させる瞑想」です。

 

 

対象は、自分の呼吸でもいいですし、目の前に見える壁のシミでもいいですし、マントラや念仏など決まったフレーズでもかまいません。

 

 

(サマタ瞑想は、)ある特定の対象(呼吸など)に注意を集中し、対象から注意を逸らさず維持しつづけるようにモニタリングすること、

 

注意が逸れた時にそれ以上囚われずにそこから注意を切り離すこと、

 

また再度対象に注意を向け直すという3つの技術を要する。

引用元:p.6『マインドフルネスー基礎と実践ー』貝谷久宣、熊野宏昭、越川房子編著、日本評論社、2016年

 


これを繰り返すことで、集中力が身につくほか、散らかっていた注意がひとつにまとまり、心が落ち着くといった効果が得られます。

 

 

心の落ち着いた状態のことをサマーディといいます。

 

 

サマーディを作ることは、次に紹介するヴィパッサナー瞑想に取り組む上でも重要になります。

 

 

ですので、サマタ瞑想は、ヴィパッサナー瞑想の準備段階に位置付けられることも多いです。

 

 

②ヴィパッサナー瞑想

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ヴィパッサナー瞑想をひとことで言うと、「ものごとをありのままに観察する瞑想」です。

 

 

ヴィパッサナー(Vipassana)の "Vi" は「明確に」、"passati" は「観察する」です。直訳すると、「明確に観察する」となります*1

 

 

(ヴィパッサナー瞑想は、)注意を特定の対象に向けることなく、

 

瞬間、瞬間に意識野に浮かんできたあらゆる私的出来事(思考、感情、記憶、身体感覚など)をそのまま知覚し、観察する瞑想法である。

 

(これを)繰り返すうちに、特別な努力をすることなく今への気づきが増え、過去や未来への心配・反すうが減少することが報告されている。

引用元:p.6『マインドフルネスー基礎と実践ー』貝谷久宣、熊野宏昭、越川房子編著、日本評論社、2016年

 

 


ヴィパッサナー瞑想では、サマタ瞑想のように注意を一点に絞るのではなく、むしろ感覚を開いていきます

 

 

からだ全身で自然に生じてくる感覚や、心の中に自然に出てくる思考や感情を、ただありのままに観察します。

 

 

例えば、全身の皮ふの感覚を観察しているとしましょう。

 

 

かすかな皮ふの痛み、かゆみ、ひんやりした感じや、温かい感じ。これら、からだに生じている体験をありのままに観察している間というのは、余計な思考や感情が生まれません。

 

 

このトレーニングを積み重ねることにより、心を乱す原因となる思考、感情、雑念、妄想に囚われない状態を作り上げていきます。

 

 

ヴィパッサナー瞑想は、ブッダが悟りを開いた瞑想とも言われ、伝統的な仏教の実践においても非常に重視されます。

 

 

(ヴィパッサナー瞑想は、)ブッダが心の汚れを完全に落として、実際に悟りを開いた瞑想法です。

 

 

悟りとは神秘的な何かではなく、完全な心の安定です。

 

悟りを開くというのは、心にある悩み、ストレス、苦しみ、不安が全てなくなり、もう二度と、怒り、欲、憎しみ、嫉妬などの感情に悩まされない心の状態を得る、ということなのです。

引用元:『自分を変える気づきの瞑想法(第3版):ブッダが教える実践ヴィパッサナー瞑想』アルボムッレ・スマナサーラ著、サンガ出版、2015年

 

 

ミャンマーの有名な瞑想指導者である S.N.ゴエンカ氏も、ヴィパッサナーの目的は完全な「心の浄化」であると述べています。

 

 

サマタ瞑想によって、ひとときの心の落ち着きを得ることはできるが、それは表面的なものにすぎないとし、ヴィパッサナーによって、苦しみを生み出す根本原因を取り除かなければならないとしています*2

 

 

サマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想の違いについて、詳しくは以下のエントリもご参照ください。

 

 


 

 

③マインドフルネス瞑想

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さて次は、「マインドフルネス瞑想」です。

 

 

今日、一般的な文脈で「瞑想」というときは、この「マインドフルネス瞑想」を指していることが多いと思います。

 

 

よく使われる言葉だけに、定義やとらえ方は人によって微妙に異なるのかもしれません。

 

 

日本マインドフルネス学会は、マインドフルネスを、
「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、 評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」と定義しています。

 

 

マインドフルネス瞑想は、今や多くのビジネスパーソンや医療関係者にも支持され世界的に普及していますが、そのきっかけは、

 

 

マインドフルネスストレス低減法(MBSR: Mindfulness-based Stress Reduction)」という8週間のプログラムにあります。

 

 

1979年、マサチューセッツ大学メディカルスクールのジョンカバットジン博士が開発したものですが、伝統的な仏教の瞑想法を近代的な医療と結びつけ、臨床の現場に応用したという点で画期的なものでした。

 

 

さまざまなメンタル疾患の症状に効果があることが科学的にも明らかになりました。

 

 

マインドフルネス瞑想の技術的な内容は、実質的に、先に紹介したヴィパッサナー瞑想とほぼ同じといえます。

 

 

ただ、ヴィパッサナー瞑想は伝統的なものですから、その目的が「悟り」「心の浄化」と、少々宗教的なニュアンスが残っています。

 

 

これに対し、マインドフルネス瞑想の目的は、心身の健康の増進ストレスの低減癒しなど、より現代人の感覚にフィットしたものになっています。

 

 

伝統的な瞑想法を、現代人に合うようにアレンジしたものだといえます。

 

 

④歩行瞑想

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ここからは、瞑想中の「動作」に着目した分類をいくつかご紹介します。

 

 

まずは、「歩行瞑想(歩く瞑想)」です。

 

 

座って目をつぶるだけが瞑想ではありません。

 

 

歩きながらでも、一歩一歩、足が地面をついて離れる感覚に注意を向けていけば、立派な瞑想になります。

 

 

歩行瞑想法は、歩くという体験に意識的に注意を向けるトレーニングです。

 

足の感覚、あるいは体全体の動きに注意を集中します。

 

歩きながら、呼吸に注意を向けることもできます。

 

 

歩行瞑想法は、外部の観察ではなく、歩くという、自分の内部に生じてくる感じを観察する力を養うためのトレーニングなのです。

引用元:pp.171-172『マインドフルネスストレス低減法』J・カバットジン著、北大路書房、2007年。

 

 

テーラワーダ仏教界の大御所スマナサーラ長老も、ヴィパッサナー瞑想の一環として歩行瞑想を推奨しています。

 

 

足を動かすたびに、床から足が離れる感覚や床に着地する感覚を観察します。

 

 

その際、心の中で、「(足を)上げます」「運びます」「下ろします」「回します」など、実況中継のことばをくりかえします。

 

 

このように、カラダを動かしながらでも、思考や雑念に囚われない心の状態を作り上げていくことができます。

 

 

座る瞑想が苦手という方や、初心者にも取り組みやすく、おすすめです。

 

 


  

⑤食事瞑想

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食事瞑想(食べる瞑想、マインドフル・イーティング)」は、その名の通り、食事をしながら行う瞑想法です。

 

 

食事瞑想は、マインドフルネスストレス低減法でも最も重視されている瞑想法の一つです。

 

 

(マサチューセッツ大学メディカルセンターの)ストレス・ クリニックで行っているプログラムを開始すると、まず患者たちは驚きます。

 

なぜなら、 瞑想とは何か普通ではない、神秘的なことをすることに違いないと思っているからです。中には、リラックスすることだと思っている人もいます。

 

こうした思い込みを直ちに取り除いてもらうために、私たちは全員に3粒のレーズンを配り、自分が実際にしていることに注意を集中し、瞬間瞬間を体験しながら、一粒ずつ食べてもらうということを行います。

 

私たちは、これを "食べる瞑想" と呼んでいます。

引用元:p.46『マインドフルネスストレス低減法』J・カバットジン著、北大路書房、2007年

 

 

食べるという行為は、きわめて日常的な行為です。

 

 

あまりにも当たり前の行為なので、多くの場合、それをあまり意識せずに行なっています。

 

 

勉強しながら、テレビを見ながら、気がついたらお菓子を一袋あけていたなんていうこと、誰もが経験あると思います。

 

 

当たり前の行為に、あえて意識的になってみることで、多くの発見があります。だからこそ、プログラムの中でも食事瞑想は特に重視されています。

 

 

 

 

⑥手動瞑想

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手動瞑想」とは、その名の通り、手を動かす瞑想のこと。とてもユニークな瞑想法です。

 


タイの「スカトー寺」で副住職をされている著名な日本人僧侶プラユキ・ナラテボー師が指導されており、日本でも広く知られるようになりました。

 

 

タイには「チャルーン・サティ(気づきの瞑想/気づきの開発法)」と呼ばれる瞑想があり、その中には歩きながらするものや指先をこするものなど、いろいろな種類があるそうなのですが、

 

 

その中でも手動瞑想は「気づきやすさ」の点からもおすすめということで、プラユキ師は特に力を入れて指導されています*3

 

 

手を14か所の決まった位置にパッパッと動かし、その位置を確認していくというものです。

 

 

詳しいやり方については、以下のエントリをご覧ください。

 

 

 

 

プラユキ師ご自身が、実際に手動瞑想を指導されている実演動画もあります。

 

 

 

 

 

チャルーンサティで大切なのは、「いま・ここ」に生じてくる現象がどんなものであれ、それに開かれ、「オッケーよ〜」という態度で受容し、あるがままの事実についての理解を深めていくことです。

 

手を動かして、その位置確認をしていくのは、そういう「いま・ここ」空間を見失わないための、目印のようなものなんですよ。過度に集中するためではありません。

引用元:p.82『悟らなくたって、いいじゃないかー普通の人のための仏教・瞑想入門ー』プラユキ・ナラテボー・魚川祐司著、幻冬舎新書、2016年

 

 

手動瞑想で重要なのは、いまこの瞬間への気づきや、どんな感覚や思いが生じても「オッケ〜」と受け入れる姿勢です。

 

 

対象への過度な集中は、逆に戒められるくらいなので、「集中」を重視するサマタ系の瞑想とは性質が異なることがわかると思います。

 

 

 

⑦慈悲の瞑想

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「慈悲の瞑想」は、自分や他者の幸せを願うフレーズを心の中でくりかえすという瞑想法です。

 

 

 

 私が幸せでありますように
 私の親しい人が幸せでありますように
 生きとし生けるものが幸せでありますように

 

 

このようなフレーズを繰り返すことで、自分や他者に対する愛や慈しみの心を育んでいきます。

 

 

からだの感覚を、価値判断をはさむことなくありのままに観察するヴィパッサナー瞑想とは異なり、価値観のある瞑想といえます。

 

 

なんとなく怪しい。偽善者みたい。。

 

 

このように敬遠する方、抵抗がある方も少なくないですが、慈悲の瞑想は、メンタルに良い効果があることが、科学的にも明らかになっています。

 

 

スマナサーラ長老も、慈悲の瞑想はお祈りや儀式でなないことを強調しています*4

 

 

フレーズを一言一句間違えずに唱えることに意味があるわけではなく、心を込めて繰り返すことで、そのときに生じる気持ちやからだの感覚の変化を、観察していきます。

 

 

フレーズに心を集中させていくので、サマタ瞑想の一種ととらえる見方もあります。

 

 

慈悲の瞑想は、比較的簡単に、イライラが治まったり温かい気持ちになれるため、即効性の高い瞑想といえますが、効果は長続きしません。

 

 

効果を感じるまでに長い時間を要するヴィパッサナー瞑想とは対照的です。

 

 

慈悲の瞑想の詳しいやり方や、その効果については以下のエントリをご覧ください。

 

 

 

 

 

おわりに

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 ①サマタ瞑想
 ②ヴィパッサナー瞑想
 ③マインドフルネス瞑想
 ④歩行瞑想
 ⑤食事瞑想
 ⑥手動瞑想
 ⑦慈悲の瞑想

 

 

以上、よく耳にする代表的な瞑想法を7つご紹介しました。

 

 

この7つは、並列に論じられるものではありません。

 

 

本文でも見てきたように、それぞれの関係はとても複雑です。

 

 

また他にも、ヨガとの関係が強いもの、密教系やスピリチュアル色の強いものなど、数えきれない瞑想法があります。

 

 

あくまでこのエントリでは、よく耳にする瞑想法の通称を並べ、それらの意味について解説したものになります。

 

 

瞑想を実践するに当たっては、それぞれの瞑想法がどのような性質なのかを理解し、自分に合った瞑想法を見極める必要があります。

 

 

参考になれば嬉しいです。

 

 

パオ

*1:『自分を変える気づきの瞑想法(第3版):ブッダが教える実践ヴィパッサナー瞑想』アルボムッレ・スマナサーラ著、サンガ出版、2015年

*2:pp.119-122『ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想入門ー豊かな人生の技法ー』ウィリアム・ハート著、春秋社、1999年

*3:pp.77-78『悟らなくたって、いいじゃないかー普通の人のための仏教・瞑想入門ー』プラユキ・ナラテボー・魚川祐司著、幻冬舎新書、2016年

*4:p.94『慈悲の瞑想 人生を開花させる慈しみ』アルボムッレ・スマナサーラ著、サンガ出版、2018年